日本、そして世界へ向けて、大府発の「スシーン」を!
なんとも美味しそうなお寿司(の食品サンプル)が、なぜかスマートフォンにピタッ!
日本はもとより、海外でも話題の商品を手がけた梶川工作所の三代目・梶川歓龍さん。奇抜で楽しいアイデアの裏に隠されたその経緯や、人柄がにじむ熱い想いをお聞きしました。
(プロフィール)
梶川 歓龍(かじかわ まさたつ)
大府市長草町出身。1981年生まれ。名古屋の老舗ストーブブランド、トヨトミの部品製造を請け負って65年の梶川工作所。その三代目として工場に立つ傍ら、新規事業としてオリジナル商品開発に着手。大阪のアートイベント「ツムテンカク」への出展を機に、大手デパート、携帯電話会社、ネットでの販売など、確実にその販路を広げている。
「スシーン」は、笑いと顧客ニーズの着地点!
ツヤっと脂が乗った中トロ、プリプリのえびが付いたスマホケース、その名も「スシーン」。おもしろさ大!大きくてポケットに入らないことすらも話のネタになりそうな話題性も大!さらに、寿司ネタのおかげで持ちやすいなど最近のスマホに一石を投じる一面も。
「薄さ軽さを重視するスマホ業界に、あえてこの提案。電気店に勤めていた時に感じた、企業と顧客ニーズのズレに着目しつつ、何より“笑い”を追求しました」と語る梶川さん。
精巧かつ頑丈に作られたケースは、食品サンプルの元祖・郡上八幡の岩崎模型製造の指導を受け、梶川さんご本人が夜な夜な作っています。物腰柔らかで聞き上手、話し上手、さらに手先が器用。開発までの経緯にも、その佇まいのヒミツがありそうですが…。
「スシーン」のベースはシャリをイメージした白と、まな板を連想させる木目調。奥にはカラリと揚がった名古屋めしシリーズの「エビフリャー」も。
販売、営業…様々な経験を積んだ修行時代。
物心つく頃からご実家の工場で仕込まれ、成人前にはすべての行程をマスターした梶川さんは、広い世界をと19歳で家を出ます。
100本のバラの花束を作った花屋、トヨタ式を肌で感じたライン作業、愛・地球博の誘導係では、お祭りのような高揚感を味わいます。そして、掃除機メーカー・ダイソンジャパン設立時には、電気店で店頭に立ち、全国トップの売上を叩き出しました。「押し売りはしていません。お客様の悩みを聞いていただけです」そんないわゆる“引きの営業”で、その後の通信会社の訪問営業でも結果を出します。
そして、10年の間に様々な出会いとスキルを身につけ、三代目として慣れ親しんだ工場に戻ります。
梶川工作所では、オートメーションの巨大マシンを併用しつつ、今も職人さんの手作業でストーブの部品を作ります。工場内を案内してくれる梶川さんの顔には、職人技の誇りと自信が満ちていました。
オモシロ寿司を“ネタ”に、広がる可能性。
懐しい油と鉄の匂い、機械音―。熟練の職人技を再認識しつつ、経営者として「自社の柱を増やしたい」さらに「地元大府に産物を!」という思いを強めた梶川さん。
そんな時、大阪の友人にスタッフとして誘われたのがアートイベント「ツムテンカク」。会う人すべてがおもしろく、エネルギッシュなお祭りに刺激を受け、愛・地球博で感じた高揚感が蘇ります。そして、数年後にはアートとプロダクトが融合した「スシーン」を発表。センスと経験、何より出会いを大切にする梶川さんだから実現した商品化です。
「 “笑う”ことで健康に。これもウェルネスバレーの一つですよね!」と笑顔の梶川さん。そうして温めたアイデアとエネルギーは、今後もさらに燃え上がりそうです。