スピードの先に見出す、勝利と親子のカタチ。
低い車体、うなる爆音。時速125km、体感的には240kmにもなるレーシングカート。
中高生の兄弟が挑むのは、そんなスピードの世界。「カートには、勝利の追求はもちろん、子育てのすべてがある」そう語るのは、息子たちを全面サポートする父・洋さん。世界を目指しながら、子育ての本質にも猛スピードで進む親子の姿とは…。
(プロフィール) ※2015年12月現在
相田 洋(あいだ ひろし)、一樹(かずき)、蓮(れん)
大府市北山町在住。父・洋さん(1972年生まれ)、長男・一樹くん(高2)、次男・蓮くん(中2)。
東海市で自動車修理販売業「スターインターナショナル」を営む洋さんのサポートの元、一樹くんは5年前からカートのレースに出場。メキメキと頭角を現し、今では蓮くんと共に兄弟で日本一、そして世界大会出場を目指す。
親子で決めた、レースへの道。
レンタルカートで感じたスピードが忘れられず、一樹くんが洋さんに懇願したのは小6の時。だが「レースはお金も時間もかかるし危ないから」と迷った洋さんは、一樹くんと話し合うこと半年。「本人の“やりたい”という気持ちがすごくて。それを無にしたくなかった」と、ついにレースの道へ。蓮くんも加わり、ほぼ毎週末、早朝、サーキットに出向いてカートを組み上げ、時には意見を交わしながら練習に励んでいます。一緒に過ごす時間の長さはもちろん、半端ないのはその密度。「大ケガの危険もあるだけに、子どもをちゃんと見て教えます」と力強く話す洋さん。そこには、子ども達への揺るぎない愛情が見え隠れしています。
サーキットを駆け抜ける若きレーサー達。 洋さんの家業は自動車修理販売業…となると、カートには有利なのでは?と思いきや「車の保管場所に困らないくらいで関係ないですよ」とのこと
子育てがあって、たまたまカートだった。
洋さんが教えるのは「他のカートにぶつけないこと」「相手のせいにしないこと」。
基本的なことですが「上位の人はぶつからないんです。何にでもルールがあるからこそ、きちんと教えたいですね」その為に、精神面を鍛えると共に、練習では常に挑戦し、ミスからも成功を導き出します。
また、早めの準備が勝敗を分ける為、時間厳守も徹底。子どもにとって耳にタコの「早くしなさい!」という言葉も、カートでの重要性を知っているからこそ日常生活でもすんなり受け入れられます。
「自分なりの子育てをカートに当てはめただけ。でも、今の世の中で必要なのは、親子間でどれだけ向き合えるかだと思うんです」洋さんは子育てにも確かな手応えを感じています。
常に子ども達を励まし、アドバイスする洋さん。「目標は勝つことだけれど、それ以上の濃密な親子関係が得られるのもカートの魅力。兄弟で乗り方に性格が出るのも面白いですよ」。
スピードを増す、勝利への手応え。
もちろん、厳しい勝負の世界で、親は絶対的に応援し、支えてくれるかけがえのない存在。悔しさも喜びも、親子で一緒に分かち合い、築いてきたカート。そんな親子の想いが実を結び、今、勝利を掴もうとしています。
2015年秋の「ロータックス・マックス・フェイスティバル」決勝では、一樹くんは下位からぐんぐん追い上げ、ごぼう抜きで21位に。強豪揃いの中で、この追い抜きは至難の業。蓮くんも決勝進出を果たすなど、上り調子です。兄弟同士も切磋琢磨しつつ、目標は来年の同大会優勝、さらにナポリでの世界大会出場。一丸となった兄弟の力と父の教えは今、勝利へのフラッグを見据えています。