ブレイク寸前!『生きくらげ』で成し得る、夢のカタチ。
コリコリとした食感で料理にアクセントを加えるきくらげ。そんな名脇役に、主役級の可能性を見出した男。それが、きくらげ栽培に乗り出した「夢成」成田保秀さんです。国産で安心安全、しかも貴重な“生”のきくらげに掛けた夢の物語をお聞きしました。
(プロフィール)
成田保秀(なりた やすひで)
東海市出身。1971年生まれ。大府市桜木町で運送業「株式会社ナリタ物流」を経営する傍ら、2016年「夢成」立ち上げ。こだわりの純国産きくらげは、げんきの郷、刈谷ハイウェイオアシスをはじめ、大手スーパー等で販売。生も乾燥も人気は上々。最近ではしいたけ栽培も手掛ける。
「きくらげ?何それ?」から始まって。
その名を聞いて思い浮かべるのは、八宝菜などで見かけるこげ茶色の姿。そのほとんどが乾燥きくらげです。
「最初は、何それ?キノコ?という感じ。でも、だんだん魅力にハマりました」軽快なトークと柔らかな物腰で語る成田さん。実際、日本に出回るきくらげの約9割は輸入品で、調理法の認知度も皆無。ですが、ビタミンDやカルシウム、鉄分、食物繊維など栄養価は驚くほど高く、味に癖がなく、どんな料理とも相性抜群。「便秘に悩む自社のトラック運転手にも効果てきめんでした」ハウスでの菌床栽培を知り、成田さんは大いなる可能性を見出します。
「ほぼ誰もやっていない安全な生食きくらげ。ならば自分が!と思いました」と顔をほころばせます。
菌から菌床に至るまで、すべて国産の生きくらげはぷっくり肉厚!さっと湯がいて、わさび醤油で食べるのが成田さんのオススメです。
社員と共に、手探りで始めたものの…。
先細りの運送業界…、社員たちも高齢化でトラックを降りる日も近い…。実は、家業に加えて新ビジネスを考えていた成田さん。「でも、だからってきくらげ!と皆、最初はビックリ。とは言え、先代の社長である父が何でも自分で作るアイデアマンで、社風もそんな感じ。すんなり受け入れられました」。
ハウスを手作りして、いざ栽培スタートとなりますが、知識不足でなんと大失敗!困った成田さんは、それが業界最大手「森産業」だと知らずに、藁にもすがる思いで突撃メールを送ります。「後から考えると無謀の極み。でも、この出会いが夢成を変えました」。以前の会社とは真逆であった「森産業」の栽培ノウハウを学び、理想の肉厚きくらげの生産にこぎつけます。
常に冗談が飛び交う和気あいあいの社員たちと。成田さんの挑戦に一緒に挑む柔軟性とチームワークが、自然とできあがっているようです。
もっともっと、国産きくらげを広めたい。
「販路もまた課題。食品スーパーのバイヤーでさえ、生きくらげは初めての方も多く、認知度の低さから、敬遠されがちでした」なんとか販路を確保しても、肝心の生産が追いつかず農業の厳しさにも直面。しかし、だからこそ安定的な良質生産に心血を注ぎます。「同じ菌種、同じ菌床でも、作り手によって形も味わいもまったく違う。だから面白い!」常に湿度と温度を保ち、収穫時期を見極め、365日休みなく見回ります。
今後は飲食店にも販路を拡大し、菌床作りも計画中。自社の再雇用や障害者雇用先としても視野に入れる成田さん。他の生産者と連携を取りつつ、認知度を上げて、中部きくらげのパイオニアになれればと語るその夢は、今後もさらに膨らみそうです。