磨き抜かれた技と想いで挑む、熱きスノーボーダー!
「誰もいない朝一のゲレンデを滑るのが一番好き。ターンの遠心力を板に伝えて“フワッ”となる感じが最高です」。精悍なマスクからとびきりの笑顔を魅せる浅田順さん(以下、順さん)は、造園業の傍ら、全日本優勝を狙うスノーボーダー。繰り出す技に情熱を込めたその想いに迫ります。
(プロフィール)
浅田 順(あさだ じゅん)
大府市吉田町出身。1973年生まれ。一級造園技能士として造園業「庭jun」を営む一方、18歳の頃からスノーボードに親しみ、一時期はプロとして活躍。シーズン時期には毎週大会に出場する現役スノーボーダー。お茶の販売や玉ねぎ栽培など活動は幅広い。小学生の娘を持つ父でもある。
本業は“木との対話を目指す”造園業。
庭木の植栽に始まり、季節ごとの剪定、管理、伐採、移植など多岐にわたる造園業。職人仕事であるが故に、順さんも親方の元で長年修行し、独立したのは数年前です。
「松の木がある昔ながらの庭園はもちろん、最近では常緑樹を植えるお客様も多い。庭のある暮らしはやっぱりいいですね」親方を見習って木に話しかけたり、時には木こりの手伝いをするなど、自然を守り、共に生きるスタンスが染み付いています。
また、この仕事に就いた一つの決め手がスノーボード。「造園業は繁忙期と閑散期がはっきりしていて、ちょうど冬が閑散期。その分、ボードに集中できます」。
18歳の頃始めたスノーボードは、常に順さんの人生の真ん中にありました。
高い木に登っての作業もお手のもの。時にワイルドに、時に繊細に。植物相手の仕事には、職人技はもちろん、豊富な知識と想像力も求められます。
最初の目標は、プロスノーボーダー。
友人に誘われて、当時先駆けだったスノーボードにハマった順さんは、毎冬旅館に住み込み、滑りを楽しみます。さらに25歳の頃、プロの存在を知ると、その世界に憧れを抱き「プロになる」という夢に向かって猛然と突き進みます。
スノーボード競技と言えば、華麗なジャンプのハーフパイプが有名ですが、順さんが行うのは並んだ旗の間を滑るアルペンのスラローム。高度なターンとスピードが求められます。
「年齢的にプロを目指すには遅いスタート。ですが、瞬発力が決め手のジャンプと違って、経験や技術も求められるのでチャンスがありました」そうして数々の大会で成績を収め、2004年ついにプロスノーボーダーに。約2年間、ツアーを回り活躍します。
スピードを重視するあまり、旗を倒してしまうと失格になるスラローム。「技の正確さとスピードを気にしつつ勝負に挑む。ある意味、懸けの世界です」と順さん。
壁を越え、その先にあったもの。
「正直、夢が叶って気が抜けました…」。順風満帆なプロ生活と思いきや、壁にぶつかり一旦スノーボードからも退いた順さん。しかし再びゲレンデに立ったのは、絶対勝ちたい選手がいるから。さらに「自分の滑りを見せることで若い世代に魅力を伝えたい」そんな想いと闘争心、プロで鍛えた実力で、数々の大会で好成績を収めます。しのぎを削るランキング上位者の中で、その存在は脅威そのもの。「アマチュア全日本優勝を目標に、どんな大会でも勝ちにいきます」と意気込みます。
さらに、ボード仲間とのつながりは、本業の「庭jun」PRにも効果を発揮。順さんが体現する“スノーボードと仲間を愛する一流アスリート”の背中は、確実に次世代にも滑り継がれていくのでした。