シミュレーターに、モノづくりの技を込めて。

田中 鉄三郎さん(タツミ化成株式会社)
シミュレーターに、モノづくりの技を込めて。

ピットさながらに繰り広げられるのは、ハイレベルなプロのやり取り。
プロドライバーが伝える微妙な実車感覚を読み取り、ドライビングシミュレーターを調整する田中鉄三郎さん。その卓越した“味付け”で業界に挑む、熱き想いに迫りました。

(プロフィール)
田中 鉄三郎(たなか てつさぶろう) 
大府市長草町出身。1970年生まれ。プラスチック製品製造の設計、成型、組付けまで一貫生産するタツミ化成株式会社。その一事業であるTSKレーシングシミュレーターを一任され、モノづくりの手腕を活かして設計から完成まで取り組む。

レーサー感覚の再現こそ、“味付け”の極意。

モニターに囲まれて運転席に座れば、レースさながらのポジション、G(重力)、音、剛性感…。田中さんが手掛けるのは、そんな迫力満点のドライビングシミュレーター。10年ほど前、遊びで市販品を買ったのがきっかけです。
「元々、大のモータースポーツ好き。可能性も感じました」。
社長の理解で事業へ発展すると、モノづくりの技術と人脈でパワフルに行動。マシンの精度を高めます。
「車づくりもコンピューターの時代。ですが、最後の最後に乗った感覚を試すのは、やはり人。その微妙なフィーリングを再現=“味付け”するのが自分たちのシミュレーターです」。
そしてその性能は、プロドライバー古賀琢麻さんの目にもとまります。

レーサー感覚の再現こそ、“味付け”の極意。

人をグッと惹き付ける語り口とみなぎる自信。アメリカ最大の人気モータースポーツNASCAR(ナスカー)にも参戦する古賀選手との相性もバッチリです。

否定派を唸らせた、モノづくりの技。

シボレー契約ドライバーである古賀選手にとって、中途半端に再現されたマシンは逆に練習の邪魔。それが、田中さんとの出会いで一変します。
「プロは曲がる時、ハンドルをほとんど切らずにブレーキとアクセル、そして腰を使います。だから、その感覚が実現できなければ意味がない。ずっとシミュレーター否定派でしたから、このリアルさに驚きました」。マシンの緻密さに惚れ込んだ古賀選手は、自ら広告塔を買って出ると共に、開発にも参加。最高の協力者を得て、性能は飛躍的にアップします。
弾丸トークで熱く語る田中さんに、的確なツッコミを入れる古賀選手。そこに垣間見れるのは、絶大な信頼関係とプロ同士のやり取りでした。

否定派を唸らせた、モノづくりの技。

古賀選手が乗るのはモーションを取り入れた最新モデル「T3R」。シート全体の動きもリアルに再現され、全身で行うプロのドライビングを可能にしました。

あうんの呼吸で、さらなる高みへ。

「あと1mm、タイヤの潰れ感がほしいなぁ」。
二人のやり取りは、こんなミリ単位の細かなオーダーが日常茶飯事。実際に乗った感覚を古賀選手が田中さんに伝え、開発に生かします。
しかし、この妙技も、的確に伝えられるプロドライバーと、それを受け止め、微調整できるエンジニアでなければ実現し得ません。レースを知り尽くし、且つ、設計から完成まで極めた田中さんだからこその巧妙なのです。
「やはり強みはモノづくりの技。この挑戦に終わりはありません」。“おもしろいから突き詰める、突き詰めるからおもしろい”、そんな相乗効果が力となり、様々な人を巻き込んで、田中さんの挑戦は極みへと駆け上がります。

会うだけで笑顔になる、バレエと元気の伝道師。
大府に、ハンドメイドの風を吹き込んで。